002 関連付け・・・
昭和10年頃の日本コロムビアの長唄や、ほぼ同年代のサボイ盤のチャーリー・パーカーなど、いま聴いても素晴らしいハイファイサウンドだ。F、Dレンジとも不満なんてまったくない。これをCDRに記録して再生すると、大幅にクオリティダウンして聴こえるのが不思議。気になるのでリッピングデータをFFT分析してみると、ノイズ成分は20KHzまで伸びている。
ここで、仮説をひとつ。
脳は楽音とノイズを関連づけて、記録されていないはずの高域を感じているのではないか、と。
「だまし絵」というのか「判じ絵」というのか、ありますよね。あれと同じか。
ノイズをカットした復刻盤の音が悪い理由がわかったぞ(笑)
012 ダイナミックレンジ
大好きな写真家、横木安良夫さんのサイトDIGITAL DAY BY DAY、2003年9月2日の日記より・・・
「・・・画素数が多ければいいみたいな風潮もある。いらないんだよ。写真にそんなに多くの情報量なんて。写真は、無限の情報量のある僕らの生きている世界から、殆どの情報を捨てることによって何か真実を発見する作業だから。」
013 機械変換系の対称性ということ
ターンテーブルの回転力がスタイラスを揺らす。連動するコイルやマグネットが発電することで、ディスクの溝から音楽信号をとりだしている。何段階かの電気的増幅を経て、スピーカーマグネットの磁界に置かれたコイルが動き、コーンが空気を揺らし音を再生させる。ターンテーブルの回転もスピーカーの磁界も、直流バイアスのエネルギー源、などと考えつつ、再生システムはアンプを中心に置いた機械変換の対称で成立していることに気づいた。
デジタルオーディオは・・・再生の枠をこえて収音から再生にいたる大きな系、すなわち伝送・増幅系の両端に機械変換であるマイクロフォンとスピーカーを置いた、きわめてシンプルな対称系。だからとても音が良い・・・といわれる日は近いのだろうか。
015 アナログマスター、デジタルリマスタリング
フィルムの銀粒子は、一粒づつ解像できるわけではなく、周囲の粒子を「道連れ」というか相互に影響を与えあいながら反応する。ポジをチェックすると最暗部、最明部とも潰れているような、いないような。階調のある粒子が存在していると感じるその実体はノイズなのか。002でふれた「関連付け」に考えが行きつく。この750×500ピクセルの画像でどれだけ伝えることができるか自信はないけれど、湿気を帯びた空気の匂いがたしかに伝わって来るような気がした。(写真はポジフィルムからスキャニングしたものです)
021 疾走する演奏者の時間軸を聴き手の意識が・・・
例えば、スピードスケートを撮影するレール移動のTVカメラ。対象物と共に移動することで詳細な変化を観測している。
人間の「聴感」も同じではないか。けして固定されたスリットをとおして音が過ぎ去っていくのを観測するのではないと思う。聴感の最小ユニットは、音を感知する瞬間の前後に過去記憶、未来推測が連なった状態で形成されていて、そのような一種「滲み」を持つ中心点が時間軸上を推移しているのではないかってね。
023 通り過ぎるゼロと無のゼロは、はたして同じか?
相対性理論と量子力学の統合というべきか、両者の相いれない矛盾を取り繕ったと噂の「ストリング理論」ではありますが、私にはイメージの断片さえ湧かない。11次元世界で打ち震えるストリングって一体なんだ。物理学は真理を記述するもの、という期待は間違いかもしれないと思った。測定さえ出来ない事象をもちいて数式として完結する世界。現世には現れないのに、存在する事象というものがあり得るのか。あるいは「真理」そのものが幾通りもあるってことか。もう少し考えてみよう、とはいうものの・・・
031 記憶の名前
パソコンのファイルは名前をつけて保存する。あたりまえのことなのに、最初そのことを知ったときは、なにか新鮮な思いだった。
人間の記憶には名前をつけたりしない。どうやって欲しい情報を引き出すのだろう? 言語的な符合もあるだろうけれど、もっと概念的な認識パターンのようなものを照合するのではないだろうか。ものを認識するとき対象物のアウトラインから入っていくように、事象のアウトラインが半透明のフォルダに入っているんだな、きっと。で、半透明のフォルダは三次元的に芋づる式に繋がっていて、アクセス主体は超高速でこれらを巡回していると思う、きっと。・・・逆ハードディスクだね。 |