882 ジョルジュエット・ジウジアーロ(Giorgetto Giugiaro)
 「多くのデザイナーが車の世界ではフェラーリをデザインすることを目指しています。それに成功する人とそうでない人がいます。まったくそれに近づけない人もいます。ですからこのようなカメラをデザインすることは自分にとって夢の頂点に到達することです。この企画に参加することはフェラーリをデザイン出来たのと同じです。このカメラのデザインが出来たのはトップにいるということです。」
ニコンを代表するカメラをデザインする意味を問われてジウジアーロが発した言葉である。
しかしこのD3、ぼくの目には醜悪なデザインにしか映らなかった。プロトタイプ(ジウジアーロのオリジナルデザイン)はもっと違っていたのかもしれないが、多用された曲面も、正面ロゴまわりのフォルムも緊張感が皆無だ。下の2点は彼がデザインしたF3であるが、ニコンとの初期のコラボレーションだ。写真のHPモデルはオリジナルデザインではないかもしれないが、凝縮した機械美を醸し出している。
ジウジアーロといえば、80年代までのクルマのデザインがとくに好きだ。
下の左写真は、彼がギア社というカロッツェリアを退社する前後に手掛けたいすゞ117クーペで、ジュネーブモーターショーや東京モーターショーに展示されたオリジナルデザインは2ドアクーペ(2+2)としては稀に見る麗しさだった。とくにCピラー(リア側ピラー)の処理が新鮮だ。残念ながら生産バージョンではフローリアンベースに由来する制約で美のオーラの半分は消えてしまった。
そして、そのほぼ10年後に発表されたのが右写真の「ピアッツア」だ。これもショーで公開されたオリジナルモデル「アッソ・ディ・フィオーリ」はより低いフロントノーズで未来を切り裂く意志を示していたが、生産バージョンはジェミニベースだから、ボンネット高の制約やらトレッド、ホイールベースの狭小化で、せっかくのフォルムを台無しにしてしまった。 |