1387 Y氏邸 アコースティックコントロールの技
 間口5m、奥行き7.5m、天井高3.5mの大空間である。 床のフローリングは良くあるようなコンクリート土間打ちにベタ接地ではなく、しっかりした木組みと構造合板で受け止める構造。これは、振動によるストレスを逃がすだけでなく、重量のあるオーディオ機器の接地点とのチューニングの余地を残した、いわば匠の技を求められる仕様と言えるだろう。Y氏はスピーカーだけでなく、パワーアンプの重さも床の振動コントロールに利用するという、途轍もない領域に踏み込んでいる。 ・ 最大積載量という概念がオーディオ再生にもあるとすれば、Y氏の繰り出すサウンドはまさにその最大値にあると思った。同行をお願いしたNさんが持参したソフト「Jean Barraqu 作品全集」の壮絶Dレンジと精緻極まる解像力、CDフォーマットにここまでの情報が込められていることに驚き、それを再現する装置にまた唖然とした。Y氏のリファレンスディスク「Arvo Part: De Profundis」は教会音楽のエッセンスを込めた12音階現代音楽という趣と感じたが、咆哮から静寂までのグラデーションの描き方からは装置の限界を掴むことが出来なかった。まさにこの空間が音楽を奏でているというレベルだ。 ・ 遮音に留意した広大な空間だが、壁面に収音系の処理は行っていないようだ。スピーカーと側壁までの距離がとれ、一次反射に時間差のある適度なディレイを保てるので、音がスピーカー近傍にまとわりつかない。狭小空間のような吸音対策が不要なので、音が活きたまま拡散する。じっさいスピーカー後方のコーナー部分で聞き耳を立ててみたが、音楽的なスペクトラムバランスが失われていないのだ。 ・ Y氏は幾多のスピーカー遍歴で有名だが(笑)その理由は容易に分かる。この万全のアコースティックキャンバスゆえ、スピーカーのポテンシャルを判定し、最適な対処を施し、その限界値を探るという趣味。間違いない、たぶん(^。^)
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