1117 ALTECとの生活
 いま使用しているALTECはウーファーの515Bが1960年代、ドライバ802Dは1950年代後半のものだと思う。すでに半世紀を経過する老いぼれと思いきや、まったく劣化の気配がない。我が家へ迎えてからすでに13年だが、いたって元気そのもの。さすがシアターユースの強者。かなり大音量で鳴らすことも多いが、これらのユニットの悲鳴を聴いたことは一度もない。家族の悲鳴なら何回も経験しているが(笑)
この時代の事情に詳しい方だったら、515Bと802Dはミスマッチと思うだろう。実際、この組み合わせのシステムは存在しない・・・ ところが、かのデュプレックスユニット604の成り立ちを調べると、515と802の主要部分を流用して組み上げたもので、この4世代目にあたる1957年に発表された604Dが、まさに515Bと802Dそのもので成り立っている。なので我が家の「Air's Edge One」は604D拡張バージョンと言えるのだ。
ドライバのエアギャップのクリーニングやらマグネットの再着磁は行ったが、すべてオリジナルパーツのまま。この分だとわたくしの寿命のほうが短いかもしれないと危惧している。一生このユニットと暮らすのか。・・・ちょっと寂しくもありか(笑)
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オールドALTECはユニットの能力をかっているだけで、じつを言うと、既成ALTECシステムの音は「?」なのだ。音が太すぎる。非常に魅力的な太さなのでハマると凄いけれど、ナチュラルな再現能力を求めると異様な別世界(笑) 三味線の音でいうと、油乗りすぎで、絃が太くなってしまう。さらに楽器間の空気が圧縮されてしまう。
などと言いつつ、生涯このユニットを使う予感がするのは、(気力と財力と時間があればエンクロージャーは再設計してAir's Edge Twoにしたいところ)我が家のリビングルームに限定すると、他に惹かれるユニット(組み合わせ)が存在しないからだ。
同じALTECの288ドライバ+311ホーンは憧れではあるが、ウーファーを二連にしないとエネルギーバランスが取れなさそうで、そんな巨大なものは置けない。JBLのオールドユニットも非常に魅力的で、とくにウーファーの150Cは「Air's Edge One」のショートフロントローディングにはもっとも相応しいものと確信している。しかしドライバのLE-85あるいは375でALTECのようなしなやかさを得るのは至難だと考える。一関のベイシーは例外的に素晴らしいが・・・
で、現代スピーカーはどうかというと、大抵のメーカー製システムはAir's Edge Oneを凌駕すると思うが(笑)ピーク120dB/1mを安定的に放射するには途方もないコストが掛かるはずだ。
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以前にも書いたが、Air's Edge Oneを作ろうと思ったとき、最初に探したユニットはデュプレックスの604Bだった。755系、601系、604系は家庭で使うスピーカーユニットとして屈指のプロダクトだ。先に既成ALTECシステムの難点を書いたが、あれは大型ホーンを用いる既成システムのことで、箱もネットワークも家庭の狭小な空間では問題が多い。
その604系のなかでも末尾にA,B,Cが付く初期型はクロスが低く、ウーファーの喧しい分割振動を聴かないで済むし、声の帯域の美味しさといったら絶品だ。ところが当時(14年前)でもコンディションの良いものは非常に高価で断念したのだ。高価な値付けで有名な某Jオーディオではペアで50万!だった。
で、発想を変えて604Dの発展系として515B+802Dとなったわけだ。
当初はナローで軽快なサウンドを夢見て、それなりの設計をしたのだが、時を経てその基本ポリシーが揺らいしまった。一部のハイエンドスピーカーが聴かせる精緻な空間や質感の片鱗を忍ばせたいと考えた。
http://www.vvvvv.net/sense/0502.html
この世界が想像できていれば、エンクロージャーの形状も素材も違ったものになったというのが、再設計したい大きな理由でもある。 |