1211 バイワイヤリングの謎(かなり長い・・・)
 2048px: http://blog.goo.ne.jp/gencyo/
バイワイヤリング方式は、 そのむかし(1970年代)東芝が出願した特許だそうで、 ウーファーユニットの逆起電力をツイターに及ぼさないという理論で、これが現在まで通用している。
オーディオベーシック別冊「いい音を選ぶVol.4」評論家林正儀さんの記事では、バイワイヤリングのメリットとして
「通常のシングル接続では各ユニットが共通インピーダンスを持つために、 ウーファーで発生する逆起電力が、ツイターに回り込んで干渉する問題を解決する方式」とし、 さらに、「この場合でも逆起電力はツイターに及ぶのだけど(途中略) 長い距離のなかでほぼ無害化される。」
ホントかぁ?と疑っているわけだ。
トライワイアリング(^^ゞ)を実践しているわたくしではありますが、素直に頷けない。
この理論の根幹は、パワーアンプの内部インピーダンスが非常に低いのでSP側からアンプを見るとショートに近く、逆起電力はそこで吸収されるというもの。 とすると、アンプの出力端子からスピーカまでの抵抗値の問題になってしまう。アンプ、スピーカー間の距離が短いとメリットはなくなるはずだが、実際はそうでもない。回り込んで悪さをするとしたら、アンプのSPターミナルまで戻ったところで五十歩百歩じゃないかと思うのだ。アンプ内部だって出力素子とSP端子の間は比較的細いケーブルで繋がったりしていて、けして直結ではない・・・。
1980年代に、ウーファー直下にC+Rをパラって逆起電力を吸収する手法がMJ誌周辺で流行ったことがある。 ところが実践してみると、効果が認められないどころかウーファー用のローパスフィルタと干渉してしまい、 タイミングがバラケる感じ。この手法に効果があるのは、マルチチャンネル駆動だけかもしれないが、じつはローパスフィルタのCにも同様の効果があると踏んでいる。
電気に限らず力の作用/反作用はどこにでも存在するわけで、ウーファーの逆起電力の影響をいちばん受けるのは、じつはウーファー自身ではないかと睨んでいるのだが、バイワイヤリング方式はその対策にはならない(笑)
かの「オーディオの科学」ではこんなふうに、 http://8317.teacup.com/shigam/bbs?&M=ORM&CID=3792 http://8317.teacup.com/shigam/bbs/3817
志賀先生の日頃の言い様は納得いたしかねる記述が多いと思っているのだが、この件に関しては正しいと素直に認めたい。
とはいえ、このことでバイワイヤリングにメリットはないと判断するとしたら、それは違うと思う。バイワイヤリングの効果は別のところにあるからだ。
キーワードは これだ。
「繋がっているから流れているとは限らない。」
ある共通電源に1500Wのモンスターアンプと5Wのライトをつないだとすると、それぞれの電源ケーブルには必要とされる電流が流れる。電球のスイッチを切ればそこに電気は行かずケーブルにも流れない。電気は必要とされるところだけに流れ込むものだ。ホットもコールドも繋がっているのに、モンスターアンプの膨大な消費電力の至近で分岐される不思議。
抵抗(R)は電力を消費するがネットワーク素子(L&C)は別物だ。
これらは時定数(=周波数)に依存する位相・インピーダンス変化機能であって電力を消費しないことになっている。コンデンサに放熱フィンがないのはそのためだが、電源(パワーアンプの出力)から見た負荷はLCフィルタの先に繋がっているユニットが消費する帯域のみに限定される。
あるオーソリティ曰く、 「フィルタリングとは宇宙の鏡に反射させること。 その永遠の写し絵を人の生きている時の中に描くこと。」・・カッコいいすね。
で、なにが言いたいかというと(笑)
ハイパスフィルタの先にツイターが繋がっているとして、フィルタの先は当然のこと、この前にも高域以外の電流は流れないのだ。ここで言う「前」とは分岐点まで遡る。シングルワイヤーネットワークの場合はLC素子の直近にその分岐点があるが、バイワイヤーの場合は、アンプのSPターミナルまで戻るわけだ。低域も高域もそれぞれが必要とする電流だけでケーブルの導体は満たされる。
仮に低域、高域に同じ銘柄のケーブルを使ったとしても効果はある。ケーブルは外部振動を拾うだけでなく、自らの電流で磁界と微振動を発生させる。不必要な帯域を除外できるメリットは非常に大きいと思う。 この点ではマルチチャンネルアンプ方式よりアドバンテージがあるかも? あちらは、帯域制限を施した信号を、ふたたび全帯域負荷に戻すようなもの。
また、その先のチューニング術として、帯域にあわせたケーブルを選択する楽しみというか苦しみを長期間味わえる。
いずれにしても、逆起電力の駆逐などという実体のあやふやな効果よりはるかに実利的な成果があるというのがわたくしの見解だ。
以上、これらは常識だよと思われた方、エラそうな書き方で申し訳なく思うが、わたくし自身、アンプの設計を始めたころまで気がつかなかったという経緯がある。とても基本的な道理なのに、こういう記述はどこにも書いてなかったような気が・・・
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