1797 アメリカによる収穫
 半村良のデビュー作である「収穫」(1963年)は、ハヤカワ・ミステリーSF選集のなかの一編として知ったが、当時高校生であった私に強い印象を残した。ある日、突然降臨した光球(宇宙船)が、大多数の人間を誘き寄せて捕獲し地球から飛び去っていく。そんなストーリーだったと記憶している。要は宇宙人によって飼育された「家畜」としての人類。この宇宙人が「神」だったのか、あるいは他の巨大な存在の象徴だったのか、当時はそこまで思い至らなかったが、いま読んだら新たな発見があるかもしれない。
ちかごろ顕著になっている日本政府のさまざまな怪しい施策。特定秘密保護法、TPP、原発推進、集団的自衛権の拡大解釈etc... これらが米国の意向(利益)に沿ったものなのは間違いなく、戦後日本を70年かけていちおうの発展を遂げさせ、いまが収穫の時期と判断した戦勝国のシナリオなのだ。この事態に異議を唱えないということは、国家としての存続を諦めるに等しい。先の「収穫」では、宇宙人の誘導に乗らなかった一個人の視点で書かれていたが、こちらの「宇宙船」が至上最強の巨大国家というところで、半村良の意図したところとじつは同質なのかもしれない。 |