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2008/03/03








2008/02/18
929 影の色あい、あるいはターニングポイント その2

自然界は太陽や月といった単一の光源のもとで照らされている。しかし雲があればそれは巨大なバンクライトとして拡散光を形成するし、二次反射、三次反射の光が大きく関わっている。たとえば物の影の色はけして暗黒ではない。この影の強弱や色調に反射光の成分が練り込まれている。

わがミニスタジオは全周を黒いスクリーンで覆っているので、光源の二次・三次反射が極端に少ない。オーディオでいうと無響室の振る舞いに近似している。なにも対策をしないと直接放射のみの非常にコントラストの高い明暗を作るが、同時に陰影のコントロールが自在という利点もある。必要な反射成分のために白やグレーの壁面を用意したり、あるいは光源自体をこの壁面で反射させて照射する。

例の"月明かり"は下の写真のようにメインライトを微少に絞ってサブロクの白いパネルに向け、さらに狭角リフレクタとグリッドで絞り込んだビーム近似のスポット光を併用した。

わたくしの写真ライティングはまったく自己流なので、専門家の失笑をかう事態もあろうかと思うが、ルーツは舞台照明ということでどうかお許しをいただきたい。(つづく)



2008/02/15
928 影の色あい、あるいはターニングポイント その1

この一週間、ひたすら撮影に没頭していた。そして広告写真を撮るということはデザイン行為そのものとの感を強く持った。日常のスナップとの違いはそこにある。アングル、ライティング、ページネーション、フォトグラファーとグラフィックデザイナーの境目はない。

作業工程のデジタル化は、従来の職域を次々とご破算にしてきたが、究極のフローはどんなものか? ひとりの人間がすべてを司るには無理があるだろうから、お互いの領域を浸食しつつ強固なネットワークを組み上げることかもしれない。

わたくしの場合はというと、不幸なことにひとりでやる癖が染み込んでしまったから、分野を限定すればなんとかなるだろうと決断した。デザイン事務所の2/3のスペースを撮影スタジオに割いた。ジャンルはもちろんオーディオだ。

製品が持ち込まれるまで、すべては白紙である。ひたすら対象と向き合う。物のなにを訴えるべきか考えながらアングルを探る。コピーライティングもそのなかで浮かび上がるのを待つ。中段左のアンプは重すぎて床置きで済ませたが、尋常ではない存在感を示していたから、月明かりのような幽玄なライティングが欲しい。(つづく)



2008/01/29
927 気になることをいっそう気にする病

日頃興味をもっているのは、全体と部分の関係だ。
人間の意識はいつも全方位に向けられているわけではなく、
意図的であれ偶発的であれ、ある特定部分に向く。
この部分の解釈が問題・・・
全体のなかの位置づけがしっかりしていれば、あるパートの重要性は
自ずと決まってくると思うのが、そう簡単にはいかない。

これは人様のことを言っているのではなく、自分のことだ。

昨晩も寝付く寸前に、隣接している鉄道管理会社の発する騒音に意識が行ってしまった。
送風ファンに周期的な金属音が混じったようなノイズ。
客観的にみればたいした騒音じゃぁないようにも思えるのに
すでに聴感覚はこのノイズだけに占領されてしまう。
カクテルパーティー効果が悪い方へ出てしまった。
で、気を取り直して他の音がどの程度か探ってみると
件の騒音よりはるかにデカイ音がそこら中にあるわけ。

寝付けないからいろいろ分析を楽しんでいると
騒音でも自然音に近いものはそれほど気にならない。
もはや自動車の走行音やタイヤのノイズは自然音に分類されるほどの
わが家の住環境なのに、電気的な歪み音ははやはりダメだ。

そういえば、通勤電車で漏れ聞こえるヘッドフォンの音は気になるのに
レールの継ぎ目音は気にならない。
ヘッドフォンのひずみ成分としか思えないような人工音と較べると、
レールや車輪の発する音はナチュラルで柔らかく、かつ俊敏で非常なハイファイサウンドだ。

というわけで・・・今日はいったい何を書きたかったのか(笑)



2008/01/28
926 ミックス光源の実験

毎度つまらん写真で申し訳ないが、目下の興味はこれだけなので仕方ない(笑)

ストロボ光と蛍光管を併用するにあたって色温度の問題は避けて通れないが、しかしケルビン値を合わせれば一件落着といかないところが難しい。この写真では影のカタチとかハイライトの描き具合などはいっさい考慮していない。ひたすら影の色味に注視した。

カラーメーターを持っていないので、ストロボと蛍光管でそれぞれグレーチャートを撮影し、そのグレーバランスから蛍光管の色温度が約600Kほど低いことが判明した。そこでPoly-colorコンバージョンフィルタB2という淡いブルーをかませた。300Kほどケルビン値がアップするはずで、これ以上の補正はスペクトラムバランスの見地から避けたいところだ。

背景に用いた蛍光管は右奥一灯だけなので、そのグラデーションに破綻がなければ、ハイブリッドライティングは実用になるということだ。

光のことを考えていると、なぜかオーディオとの共通性を感じることが多い。
もっと自由でいいのかもしれないと思いつつ、しかし、基本を押さえるところからしか始まらないのも事実だ。



2008/01/25
925 ストロボシステムの導入

蛍光管の定常光ライティングは設備コストが安いし、なによりわたくしのような物撮りのキャリアの少ない人間には"見えるとおり"という判りやすさがいい。この2年間、ずいぶん勉強させてもらったが、不満も多かった。光量調整に多くの時間を割かなければならなかったし、たいていは後処理(Photoshop)にしわ寄せが来た。

ただ、前回も書いたようにシンプルなライティングといっても最低4灯必要なので、ストロボ化計画には躊躇いもあった。コストが尋常ではない*とか、モデリングランプを頼りに思い描くような光を作れるものかどうか、などがその理由だ。
(*ストロボ4灯を制御するための総コストはEOS-1DsIII+NIKON D3くらいになる。)

で、窮余の策が蛍光管を背景に用いるハイブリッドライティングだ。これが一応でも使えるようなら、その後の展開も描けるだろう、ということでストロボシステムの導入に踏み切った。機材の構成や機種選定では悩みに悩んで、でも現時点ではベストの選択になったと思っているが、ブロンカラー社のジェネとヘッド。それに吟味したリフレクターである。今日の午後、代理店の担当の方が届けてくれたので、早速実験に取りかかった。わたくしは不器用で物覚えが悪いので、ひとりひっそりと取り組まないと成果が出ない(笑)

今回の案件は覚えることが多く(なにしろフラッシュメーターは使ったことがないし、EOSの外部ストロボ設定もライブビューとの連携も初めての経験だ。)忘れやすい頭に事前に操作プロセスをたたき込んで、最初に取りかかったのはハイブリッドライティングだ。

下の写真は。狭角度リフレクターにグリッドをかませたスポット的なエリア光とデフューズした拡散光による2灯のストロボ光のみ。ランプの位置も2灯の光量比率も大ざっぱだが、非常に滑らかな周辺減衰が気持ちよい。これに背景用の蛍光管2灯を加えたものがさらに下の写真だ。それぞれの光源はカラースペクトラムに違い**があるので、これを上手くコントロールできるかどうかが今後の課題だ。
(**ミックス光源では相互の影響でシャドウに色むらが発生している。)