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2008/04/26
960 演奏者の"気"の表現、あるいはSNと鮮度についての試行

I

S/Nが良ければ、微細なニュアンスが出て演奏の気配も出やすいと考えるのは普通だが、実はそうでもないところが悩ましい。わが家のシステムでは増幅系のゲイン配分を考慮してオーバーオールの残留ノイズを聴感上ほぼゼロに押さえ込んでいるが、アンプのゲインを落とすプロセスで演奏の"気"もやはり落ちるのではないかと最近疑っていた。アルテックで残留ノイズが聞こえないのはやはり怪しい(笑)

わが家の場合プリのアウトプットトランスを外してアンバラに変えると大幅にゲインが上昇し、いままで12時のボリューム位置だったものが8時半くらいになる。SPからの残留ノイズも夜間では気になるレベル。過去の実験ではそのノイズだけでNGだったのだが、音はまったく違う。なんというかNFBをやめて無帰還にしたような蛇口全開モード。やはり、こっちか。

この3年、真面目な音作りに偏りすぎたか、このような奔放に弾け飛ぶサウンドを忘れていた。音楽の"気"が充満し、それが自然に溢れ出ると表現すればよいのか。


II

以前から "鮮度" はけっこう気にしていた。単段無帰還プリアンプやウーファーのネットワークスルーなどはそのためと言っても過言でない。いちおう成果はあったと思っていたが、甘かった。

いままで聴いていた鮮度は単なる "鮮度感" に止まっていたと今は思う。そのくらい今鳴っている音は"活きている"音。オーディオが鳴っている感じがあまりしない。

ただ、ドライバーから聞こえる残留ノイズとゲインが高すぎてボリュームコントロールが難しい点は要改良だ。ゲインを下げる方策を考えているが、たぶん、なにをやっても今の鮮度は保たれないような予感。


III

ディネッセンのJC-80というプリアンプは素晴らしい音質なのにS/Nが悪いという評価があった。当時のステレオサウンド誌の記事で興味深い記述があって、それは長島達夫氏が、

「S/Nが悪いことと音の良さには関連があるんじゃないだろうか?」 と述べたのだ。

テクニカル方面で信頼されていた氏としては意外な意見で驚いたが、他の評論家たちからはほぼ全否定のような反論が出て、そこでその記事は終わっていた。

わたくしは、そういう因果関係はあると思っていて、電圧増幅段のNFBには未だに否定的だし、真空管でも石でも、増幅ディバイスには持って生まれたμ(増幅率)があり、それを落とすいかなる手段も鮮度を劣化させるのではないかと。

とすれば、ボリュームは諸悪の根元だし、負荷インピーダンスは高いほど良いということになり、はたまたμの高すぎる石はもともとプリアンプには不適当・・・などということになってしまうが(笑) 要は数値的なスペックには出にくい「鮮度」にプライオリティを置くオーディオ作法は重要ではないかと、ここ数日のわが家の音を聴きながら思った。


IV

使いにくいとはいえ、ビクター・ウーテンのスラッピングベース「アメイジング・グレイス」やグレニーのパーカッションをボリューム11時で聴くと・・・これは恐ろしい世界。 ウーテンのバンジョーっぽいアルペチオ奏法で、指一本一本が見えるような俊敏な弾け方はかつて聴いたことがない。

アナログディスクのオランダ盤でアン・バートンの「ブルーバートン」 ウッドベースの質感はもとより距離感と大きさに、こういう録音だったのかと はじめて知った。これでピアノがもう少し立ってくれるとパーフェクトだろう。


V

現行のプリアンプをフォノイコ専用にしてあらたにライン専用アンプを作るのがベストかもしれない。回路は現行のラインアンプの最終段のままでいい。CDの出力をダイレクトに入力するからグリッド電位は3Vくらいが適切かもしれない。SRPPの上側カソードアウトにアルプスのアルティメイトボリュームをぶら下げる。まったく無謀な構成みたいだがこれまでの経験からぜったいイケル。ホントだ(笑)

デザインはアルミの正四面体(三角錐)で決まりだろう。





と考えつつも、新たなアンプ製作は諸事情で難しいので、現行ボリュームを入力レベルの設定に特化して、新たに音量調整ボリュームをライン増幅段の後に挿入することに決定した。

聴取レベルが一定なら必要ないディバイスだが、休日午後の爆裂サウンドと平日深夜のリスニングでは平均音圧レベルで40dB以上の違いがあるはず。CDの実用ダイナミックレンジを70dBと仮定すると、ラインアンプに求められるダイナミックレンジは110dBに達する。

これは、無帰還真空管アンプでは(じつは石でも同じ)無謀な仕事! ソースの70dBでさえアンプにとっては厳しく、動作域のスイートスポットは必ず存在する。最終的な音量とは無関係に入力レベルでアンプの美味しい動作域を設定するという計画なのだ。 これは業務用ラインアンプでは昔から行われている手法ではあるが。

音量調整用のボリュームは先のアルプスRK50型で、−120dBを保証する世界最高レベルのボリューム。ただ、トランスの替わりにボリュームが入るデメリットも当然あるわけで、これはやってみないと結論が出ない。なお、ラインアンプの出力インピーダンスを考慮し10KΩタイプを特注した。


VI

という次第で、ライントランスを省いたビビットなサウンドを10日ほど聴き続け、もう元には戻れそうにないが、最後の記念にもう一度トランス+バランス送りに戻してみた。

ところが・・・これが良いのだ。参ったなあ。

圧倒的なSNでドライバーからは残留ノイズの微塵も聞こえない! ハイゲイン・アンバランスより深くて濃厚! 鮮度感もFレンジも劣っているのにソリッドな密度感。声の実在感はやはりこっちって感じ。アンバランスが白をバックグラウンドにしているとすれば、こちらは漆黒のベルベットの世界。こりゃ、こっちも残す方法考えなくては・・・(ホント、一貫性がない。スマンです。)



2008/04/21
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2008/04/21
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2008/04/21
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2008/04/16
956




2008/04/16
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2048px
http://blog.goo.ne.jp/gencyo/e/e07895645d3ecb4dc2d81f72ed7bcaa9



2008/04/15
954 木村哲氏「情熱の真空管」

オーディオウエブサイトの黎明期から現在に至るまでの、その継続力というか情熱に驚嘆している。密度のあるコンテンツ群はアンプの原理〜応用を学ぶためのバイブルであると断言したい。
http://www.op316.com/tubes/tubes.htm

現用プリアンプを構想していた頃だから1997-8年だったと思うが、ぺるけさんとのメールのやり取りはとても刺激的で大いに影響を受けた。あれから10年も経ってしまった・・・

これは、最近改訂されたコラムだが、ぜひ読んで欲しい(とくに中盤以降の数章)。

「良い音のアンプやオーディオシステムを実現するには」
http://www.op316.com/tubes/tips/tips19.htm

※未だ、ケーブルで驚嘆しているわたくしにこの境地は当分訪れそうにない(笑)




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