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438 原音再生は妄想か 空間イコライジングの限界 | 音は三次元空間を時間推移する超立体だ。一元的な信号を扱うだけのスピーカーも、空間に放射された瞬間、リスニングルームのリアルな空気がそのキャンバスになる。この空間はほとんどの場合、固有の音響的キャラクターを持っている。スペクトラムバランスとその重心位置は音楽再現において重要項目であるが、再生空間の音響特性が重畳されるわけで、ニュートラルなキャンバスにするためのイコライザー(Frequency Equalizer)は有効なのか、という個人的"偏見"イコライザー論を少々・・・。 ・ グラフィック(あるいはパラメトリック)イコライザーを音場補正装置と称する場合もある。この種のツールは一元的な量的コントロールに特化しているから、情報列に対してのエネルギー偏差を矯正する目的には有効であっても、空間に放射された多次元現象を制御することは難しい。ピークもディップも立体的現象であり、3次元の歪みを2次元の視点で補正することに似ている。 固有空間における周波数特性の乱れは、その多くが不要輻射や相互干渉による位相変調が要因であり、結果として量の変化という外形を示しているにすぎない。補正による位相変化や、超微少レベルのリニアリティの劣化などが皆無の理想ディバイスが存在したとしても、量的補正では「改善」と「悪化」がセットでやってくる。現実の機器ではさらなる位相変調を誘因する危険も孕んでいる。 ・ 乱暴な表現になるけれど「完璧なバランスだけど音が寝ている」状況と「音は生きているけれ破綻したバランス」という両翼の内のどこにポジションを置くかという使い手の意識、音になにを求めるかというシンプルな問題に行き着く。個人的には、より後者に近いものにプライオリティを置いているようだ(笑) さらにいえば、部屋の癖を積極的に認める考え方があってもいいとさえ思っている。 ・ リスニングルームをコンサートホールに変えるといったトリックを好まない話は以前に書いたけれど、目の前の空間のポテンシャルを大事にしたい。個性を外圧で制御すればポテンシャルは下がるのが世の習いだ。コルトレーンが突如現れて、この空間で演奏している音を想像してみる。・・・たぶん、補正なんかいらないはずだ。まあ妄想・幻聴のたぐいだと思われるだろうが、ぼくにとっての原音再生は案外こんなものだったりする。 ・ 原音場再生の可能性に関しては前回書き連ねたとおりであるが、演奏空間と再生空間のアコースティックの整合性をどのように解決できるのか、これはまったく想像がつかない。ご教授いただければ幸いである。(EOS-1Ds2 EF16-35mm) |
2005/08/08 |
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437 廃案、解散・・・ | 権益保持守旧派が喜んでいたけれど、勘違いも甚だしいよね。世の中の流れが見えない政治家はまとめてリタイアだね。(EOS-1Ds2 EF16-35mm) |
2005/08/08 |
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436 原音再生は妄想か プロローグ | オーディオが発展段階だった時代は「原音再生」は確固たる目標になり得たと思う。技術進化の行き着く先に「生」と同一の音響現象が発生するというその思想は崇高なものだが、錬金術にひけを取らないほど困難なアプローチだ。生演奏における聴き手との共振作用といったメンタルな、さらに言えば形而上的領域をいっさい無視し、物理現象面だけに問題を絞ってさえ・・・ ・ なぜなら、マイクロフォンもスピーカーも一元的な合成波形しか相手にできないからだ。生の音はさまざまな波形(疎密波)が生きたまま混ざり合っている状態といえる。重なってひとつに見えるような波形現象もそれらは複合(分離)状態であり、単一の合成波のような非可逆のフォルムとは異なる。カクテルパーティー効果は、そのような生きている複合波からターゲットを抜き採る人間の多元的聴感能力のことではないかと考えている。 ・ その点で、ステレオ技術は生の音場に近づくエポックではあった。伝送系を二つに分けることにより、モノーラルでは描きえない位相状態やライブな波形差分を十分とは言えないまでも記録することができる。(これらを十分に再現できるかどうかは別問題・・・) ・ 生音場の完全な再現にはそれこそ無限チャンネルを求められるだろうが、人間の聴感覚から適切な閾値を選ぶことで、生に肉薄するレベルに到達するであろうことは想像できる。たぶんそれは高さ方向を含む16チャンネルくらいの多元伝送ではないかと推測している。ただその実現は技術的問題より、そのようなクオリティを近未来の人間が求めるかどうかに係わる。音楽のネット配信が本格化し、一曲単位の切り売り、しかも非可逆圧縮データが普通になっていく状況をみていると、どうやら原音再生は妄想で終わりそうな気配、というかオーディオ自体が前世紀の遺物になる予感も・・・。(EOS-1Ds2 EF70-300mmDO) |
2005/08/05 |